持続可能な社会の実現と社会変革のための沿岸海洋の評価
「持続可能な社会の実現と社会変革のための沿岸海洋の評価 (COAST Card) 」は、ベルモント・フォーラムが支援する学際的な国際共同研究プロジェクトです。ベルモント・フォーラムは、参加国の共同支援機関を通じ、世界的な持続可能性に関わる諸課題の解決を促進するための研究を支援しています。特に、研究における共同設計と共同開発のプロセスに、様々なステークホルダーに加わって頂くことを目指していることが特徴です。
COAST Cardプロジェクトは、アメリカ、フィリピン、ノルウェー、インド、日本の研究者による共同プロジェクトで、つぎの3つのツールを統合した取り組みを行います。
3つのツール
- 社会・環境状況レポートカード(RC)を用いた環境・生態系やその変化に関わる社会的要因の状況の評価
- 社会・生態学的ネットワーク分析(SNA)を通じたステークホルダーの同定と社会的ガイダンス
- システム・ダイナミックス・モデル(SDM)を用いた様々な対策間の関連性分析と優先すべき対策の特定。
状態の検知
社会・環境状況レポートカード(“通信簿”もしくは”成績表”)は、設定された各指標について、目標値や基準に照らし合わせて定量的に段階(ランク)評価することにより、一般の方に分かりやすく伝えるためのツールです。指標には環境の状態、社会福祉、そして経済状況が含まれます。人々が重要と評価する指標を洗い出すことで、レポートカードの実用性を向上させることができます。
協働
社会・生態系ネットワーク分析は、様々なコミュニティメンバー、生態学的単位、そして価値との間の関連性を同定することで、多くのステークホルダーが関わる対策と支援について戦略的に優先順位を付けます。ステークホルダー間の関係性を詳細に理解することによって、協働作業やさまざまな対策の調整を最適化することができます。
科学的根拠
システム・ダイナミクス・モデルは、因果関係ループ図を使用して各指標間の関係を定量化したもので、指標間の相互関係や影響の程度を視覚化します。これにより、いくつかの管理シナリオを評価することで、より良い結果をもたらし得るシナリオの提言を行うことができます。
COAST Cardのアプローチ
COAST Card は、沿岸と海洋の持続可能性に関する管理決定の有効性についてモニタリングし予測・報告する、ステークホルダー主導型の革新的なツールです。
プロジェクトの実施枠組みは、波紋状の学習プロセスによって表されます。ステークホルダーは、各国サイトの事業を双方向的なプロセスによって学びます。COAST Card は、最初にチェサピーク湾向けに開発され、同時に、マニラ湾、東京湾・石西礁湖、そしてインドのゴア海岸に適応するための開発が行われます。
各サイトで、ふさわしい人物(社会ネットワーク)、公開可能な総合情報(レポートカード)、そしてしっかりとしたモデル群(システム・ダイナミクス)を組み合わせ、社会・環境状態のポジティブな変化を促進するために必要なガイダンスを提供できます。
COAST Cardプロジェクトは、波紋状の学習プロセスを有し、ユーザーがシステム・ダイナミックス・モデルと社会・生態系ネットワーク分析に繰り返しアプローチすることで、対象とするシステムの最新の価値とシステムへの様々な脅威を反映した正確なレポートカードが作成されます。
COAST Card 推進体制
私たち国際チームは、先進国や途上国の多様なステークホルダーを結びます。超学際的で国境をまたぐアプローチを利用して、意図的に多様なステークホルダーを参加させることで信頼関係が築かれ、地域コミュニティが、その能力向上を通じて活力を得ることができます。
ステークホルダーと協働で新たな知識を作り出していくことは社会的学習と集団行動の基礎を担うので、グローバルな適用性がある斬新な解決法を私たちがさらに開発していくこと、そして他の沿岸および海洋システム内の持続可能性と変革を促進していくことが可能になります。