COAST Cardプロジェクトは、以下の3つのツールの開発し、それを活用するとにより、多様な関係者の自主的な参画を促し、持続可能な沿岸域の創出、維持管理を目指しています。
- 社会・環境状況レポートカード(RC)を用いた環境・生態系やその変化に関わる社会的要因の状況の評価
- 社会・生態学的ネットワーク分析(SNA)を通じたステークホルダーの同定と社会的ガイダンス
- システム・ダイナミックス・モデル(SDM)を用いた様々な対策間の関連性分析と優先すべき対策の特定。
社会・環境状況レポートカード(RC)
社会・環境状況レポートカードは、対象海域の“通信簿”もしくは”成績表”として、流域全体(海域だけでなく陸域も含む)と自然、社会、経済など多様な視点から設定された指標群を用いて、評価するツールです。一般の方に分かりやすく伝えるために、その可視化方法も含め、様々な工夫がなされています。
本手法の原型は、チェサピーク湾の環境状況を測定するために開発されました。測定項目は、7つの環境指標(溶存酸素、窒素、リン、クロロフィルa、透明度、海草、底生生物群)、ワタリガニ、イワシ、スズキなど特定生物の指標、保護地域、濁り、関係者の参画などの社会的指標を含むものでした。
https://ecoreportcard.org/report-cards/chesapeake-bay/
社会・生態学的ネットワーク分析(SNA)
社会・生態系ネットワーク分析は、対象海域のコミュニティメンバーや行政組織、学術関係者、産業関係者(漁業者などを含む)など多様な関係者をリストアップするところから始まります。そうした関係者がどのように対象海域の生態系と関係しているのか、相互にどのような関連性があるのか、その結果として対象海域の環境保全・再生にどのような影響力を発揮するのかなどについて明らかにすることを目指します。
例えば、東京湾においては、東京湾再生推進会議や東京湾再生官民連携フォーラムが設置されており、水産関係の研究者や教育関係の取り組みとの連携が見られる一方で、産業(漁業)の強い影響力も顕著です。
例えば、石垣島・石西礁湖においては、サンゴ礁保全のために自然再生協議会が設置されていますが、その対象範囲や取り組みは限定的と思われます。また、持続可能な観光業の発展が地域において不可欠と思われることから、より広い関係者を包括する八重山未来会議(仮称)のような新組織の構築を目指したいと考えています。
システム・ダイナミックス・モデル(SDM )
システム・ダイナミクス・モデルは、因果関係ループ図を使用して各指標間の関係を定量化したもので、指標間の相互関係や影響の程度を視覚化します。これにより、いくつかの管理シナリオを評価することで、より良い結果をもたらし得るシナリオの提言を行うことができます。
東京湾および石垣島・石西礁湖においては、潮流・海流などの物理的なシミュレーションモデルを基盤として、栄養塩などの挙動を計算できる生態系モデルを構築してシナリオ解析を行うことを目指しています。
石垣島・石西礁湖においては、先行する研究により、陸域からの栄養塩の供給、濁りの拡散が海域のプランクトンの成長に影響を及ぼし、オニヒトデの幼生の生存率が改善し、オニヒトデの大量発生が引き起こされる可能性が指摘されています。